共鳴現象の起こる場

共鳴現象という、通常とは異なる「知」のカタチとは?

目の前に突然あらわれたリアリティ

ずいぶん前のことですが、

中南米のシャーマニズムのトレーニング中、
不思議な体験をしたことがあります。
 
この話は今までほとんど人に話さなかったのですが、
実はこれが現在やっていることのすべての発端となっています。
 
山の中で一晩過ごしたときのことです。
月が雲に隠れてかなり暗くなったとき、
とつぜん目の前の光景に細かな網の目が現れたのです。
繊細で柔らかそうなその網は、足元の地面や木々の間にも
すきまなく緻密に張り巡らされていて、それは空一面へどこまでも広がっていました。
 
「幻視だろう?」と自分に問いかけました。
たしかにそれは幻視かもしれません。
 
でも幻視というにはあまりにもリアルで、
触れてみても感触こそないのですが、
目を凝らしてよく見てもはっきりと見えるのです。
 
これが幻視だとしても目の前に見えてしまっているので、
ではこの網はどんなものなんだろうかと思い、確かめることにしました。
 

「不思議な網の目」で実験したこと

手を叩いて音をだしてみると音は網目に伝わってパーッと拡がっていきます。
叩き方で反応が異なるみたいで、楽器の音を出すように集中して丁寧に音をだすと、
それが網目に伝わり、それと同時に風がサッと吹いて木々の葉を揺らします。
まるで音に反応して自然が応えているようになるのです。
逆に適当に叩いた音は、網目に拡散はするのですが特に何も起こりません。
 
また頭の中で考えていることにも変化が起こりました。
たとえば心の中でなにか質問をすると、それが網にぱっと広がったと思った瞬間、
同時にその質問の答えが返ってくるようになったのです。
質問の本気度のようなものに応じて返ってくる答えが異なるようで、
本気の場合、核心をついた鋭い答えだったり、自分が思ってもいなかった
衝撃的な答えが返ってきました。
 
これは、今までに経験したことのない、ふつうに考えたり想ったりすることとは違う、
直観とも違う、なにか別のかたちの「知る」という体験でした。
 
この網の目が見える状態は明け方には収束し、
その後、あれほどはっきり見えることはありません。
 
 

もしかしてこれはインドラ・ネット?

「あの網はいったいなんだったんだろう」
帰ってから調べてみると、この網の目のことは
さまざまな本や文献の中に出ていることがわかりました。
イスラーム神秘主義の教えのなかにも、また古来からの智慧を伝承する
ハワイのカフナの教えにも記述がありました。
 
世界のあちこちの教えや伝承のなかに網の目のことが書かれている。
ということはこれはぼくが勝手にイメージしたものではなく、
少なくとも共通のイメージ、あるいは、特定の意識状態だと
見えるような存在なのかもしれないと考えられます。
 
仏教の華厳経(けごんきょう)にも、「因陀羅網」として登場していました。
これはいわゆる「インドラ・ネット」と呼ばれているもののことです。
 
もしぼくの見た網がこのインドラ・ネットと何かしら同じものであるとするならば、
「世界はすべてつながっている」と昔からいわれていることは、
単なる観念的なものではないのかもしれません。
 
このインドラ・ネットについて、
人類学者で宗教学者の中沢新一さんが本の対談のなかで
こんな話をしています。要約すると、、、
 
「華厳経はこの宇宙がどう動くのか、宇宙がどうできているのかについて、
インドラの網という比喩で語っている。ありとあらゆるものが
インドラ・ネットのなかで信号を出し合い、共鳴し合って動いている。
その共鳴現象を「知る」といっているが、私はそういう知があるのではないかと思っている」
 
「共鳴現象による知」という、通常とは異なる知るカタチが
存在している可能性があるということのようです。

 

 

目指すは共鳴現象装置

この「共鳴現象」という解釈に、ぼくは可能性の扉が開かれていく感覚をおぼえました。
 
このような「知」については、たとえば数学者の岡潔が「情緒的知性 」とよび、
またミケランジェロが「幻視的知性」とよんでいるものも想起させてくれます。
 
「インドラネットのような網の目を見た」
というこの体験が人生のターニングポイントとなり、
こうした意識世界の存在を知ってぼくのあらたな探求が本格的に始まりました。
 
現在主宰しているTheディープ座というのは
こうして始まった探求が一つのかたちとなったものです。
 
古来からの叡智やシンボル、象徴、パターン、
また最新のテクノロジーを使って共鳴現象のようなものを起こす、
いわば「装置」のようなもの。
 
Theディープ座が、知的なめまいに似た感覚のゆらぎを体験する
「共鳴現象の起こる場」になればと願っています。
 
アウェアネスアート研究所 主宰 新海正彦