吉福さんが日本に戻ってから取り組んでいたことの
一つに統合失調症の方のケアがあります。
統合失調症というのは、幻覚・妄想などを伴う精神疾患で、
非常に治りにくい病気とされ、通常は発症すると入院、
投薬治療を受けることになります。
しかし吉福さんは、投薬しないで生活できるようにケアする人材を育て、
それをサポートする団体つくりたいと考えていました。
アメリカではいわゆる精神疾患の人達を、精神的成長の観点から
サポートするという動きがはじまっていました。
それはSEN(スピリチュアル・エマージェンシー・ネットワーク)という団体で、
吉福さんは日本でSEN JAPANを立ち上げました。
なぜ統合失調症の人のケアをライフワークの一つにしていたのか。
それについて吉福さんはこう話していました。
「統合失調症の人というのは、普通の状態の人よりも、
はるかに人間的な印象がある。もちろん本人は社会に存在するのに
精一杯で大変だけれども、それは周りが病気扱いしていることに問題がある」
じつは統合失調症の方の数はかなり多く、
思いのほか身近に存在されているのです。
日本に限らず人口比率でいうと150人に1人といわれています。
少し詳しく書くと、
統合失調症になると家族や周囲が不安になり病院へ行くわけですが、
病院ができることはかぎられ投薬治療が主です。
しかも服薬による治療が効果を上げているとは言い難く、
統合失調症と診断されたら何年も入院することもあり、
発症したら完治は不可能と思われているのが現状なのです。
吉福さんは、こうした投薬中心の考え方とは、
まったく別のアプローチをしていました。
「統合失調症は治る」とはっきり公言するのです。
彼がいう「治る」というのは、抗精神病薬の服用を
必要としないレベルに復帰するということです。
これは精神医学の常識とはまったく異なるもので、
吉福さんの考え方は、日本の精神医学界では
なかなか受け入れられないものでした。
しかし近年、こうした吉福さんのアプローチと
共通点の多い手法が注目を集め始めています。
それはフィンランドのオープンダイアローグという手法で、
投薬なしでの治癒率が80%という報告もあり、
ようやく床的なデータも出始めています。
吉福さんのやり方と共通する点がいくつもあり、
吉福さんには先見の明があったのだとあらためて感じさせられます。
かれの基本的な考えは
「あらゆる精神疾患は個人の精神的変化(成長)のプ
ロセスにおける混乱」というものです。
鬱、パニック、不安といった精神疾患はすべて同じで、
それは統合失調症に対しても
十分通用できる考えだといいます。
そして吉福さんは統合失調症は完治すると確信し、
実際に実績を上げ、そのやり方を多くの人達に広めることを
最後までライフワークの一つとしていました。
アウェアネスアート®研究所 主宰 新海正彦
株式会社 アクロアシス
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